イヌの遺伝子-(1)イヌ科イヌ属の遺伝子

犬が、オオカミの持ついろいろな遺伝的形質や習性を引き継いでいることは、事実です。

これまでは、オーストラリアにいる「ディンゴ」やインドを中心とした南アジアに生息するパリア犬に近いタイプの野生の犬が先祖ではないかというのが通説でした。

2010年、アメリカのカリフォルニア大学などの国際研究チームは、85種類の犬、約900匹と、ヨーロッパ、北米、中東などの世界11地域に生息するハイイロオオカミ200匹以上を対象に、DNAの約4万8000ヶ所で、わずかな配列の違いを比較しました。

その結果、犬と遺伝的に最も近いのは、中東に生息するオオカミであることが分かったのです。

中東では、人間と犬が一緒に埋葬されている1万2000~3000年前の遺跡も発見されていますが、犬の起源は、中東のオオカミということが裏付けられたわけです。

犬の歯の数は、オオカミと同じ42本

犬もオオカミも、妊娠期間は約9週間(60日)

遺伝子が組み込まれている染色体の数は、犬は、オオカミと同じ78本(2n)

同じ染色体数を持っているものが、オオカミ、ディンゴ、コヨーテ、ジャッカルです。それらと犬との間で交配を行った結果、繁殖性に問題ない雑種が産まれてくることからも、遺伝的に同じ種だということが立証されています。

もともと犬が飼われはじめたのは、インドか西アジアだと考えられています。そして、ウルム氷河期が終わって気温が上昇し始めた約1万5000年前から、移動を始めた人間に連れられて世界中に広まっていったのです。

東に移動した犬が、朝鮮半島を経由して日本に入ってきて、さらにシベリアに北上し、陸続きの北アメリカ大陸へと伝わっていったということが、犬の赤血球に含まれるヘモグロビンの遺伝子調査でわかりました。

これまでは、ペキニーズなどの小型の愛玩犬はアジアに住んでいた小型オオカミを、ハスキーや日本犬などのスピッツタイプは北方のオオカミがそれぞれの先祖だと言われていましたが、インドからアラビアにかけて現在も分布している小型のインドオオカミが、全ての犬の祖先である可能性が高いと考えられるようになっています。

エレーン・オストランダー博士が行った遺伝子研究では、犬は大きく4つのグループに分けられました。最も古い犬の種類はアジアのスピッツ系のシャーベイ、チャウチャウ、柴犬、秋田犬のグループ。アフリカのバセンジーのグループ。そして、中東のアフガンのグループと北極のハスキーのグループです。

遺伝子的には、シー・ズーがジャーマン・シェパードよりもオオカミに近いとか、世界最小の犬であるメキシコのチワワが大型犬のグレート・デーンと近い親戚だという事実が判明したのです。

飼い犬の系統図

プティアティニ : 姿はディンゴやパリア犬に近く、新石器時代にエジプトにいた


→ マトリスオプティマエ : シェパードなどの牧羊犬に

ヨーロッパ   → インテルメディウス  : 獣猟犬に

→ パルストリス      : テリア、ポネラニアンなどの小型犬に

エジプト    → レイネリ         : グレーハウンドなどのスリムな犬種に

北極圏    → イノストランツェビ   : エスキモー犬、マスティフ、ブルドックなどに

(オオカミとの交雑)

●イヌ科のその他の動物

イヌ属ではないイヌ科の動物は21種類現存すると言われています。キツネ、タヌキ、リカオン、タテガミオオカミ、ヤブイヌ、ドウルなどです。イヌ科の動物は草原で獲物を追いかけて捕食していたという共通点があります。そのため、イヌとよく似た習性や社会的な行動があるとされています。

キツネは、群れを作って集団で狩りをして、オスもメスもおっしこでマーキングします。リカオンは、食べたエサを吐き戻して子どもに与えます。ヤブイヌは、鳴き声で仲間とコミュニケーションします。

進化の過程で、イヌ属の系統とは遠く離れてしまったために、交配することができません。

ヤブイヌは、南アメリカにいる原始的な犬で、犬とタヌキの混血のような風貌をしています。10頭くらいの群れを作って水辺で暮らしていて、指の間には水かきがあります。

また、ヤブイヌは、オスだけではなく、メスも縄張りを主張するマーキングをします。オスは犬と同じように片足をあげるスタイルですが、メスは逆立ちマーキングです。

ヤブイヌは、後ずさりしながら、後ろ向きに走れるという特技の持ち主ですが、これは、地面に穴を掘ってくらしているので、巣穴にもぐり込むときに便利だからと言われています。

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