イヌの脳の発達と性格形成-(3)社会化期

(3)社会化期 (生後3週目~12週目)

成犬時の体重が30kgの犬の場合、生後1日目10ccほどだった脳は、生後8週目(56日)になると、約6倍の60ccにまで成長します。

「移行期」(生後13日~生後20日)

生後13日からの1週間、生後20日になるまでの期間を「移行期」と呼ぶことがあります。

生後13日頃になると、光を感じる程度ですが、子犬は目が見えるようになります。そして、生後20日ごろには、耳が聞こえるようになります。その頃になると、外界からの刺激を感じとれるようになるのです。

移行期の子犬の脳波を調べてみると、眠っているとき、活動しているとき、あるいは興奮しているときに、明確なパターンが現われるようになります。つまり、脳が活動し始めているのです。

この頃から、子犬どうし、じゃれあったり、しっぽを振りながら、吠えたりうなったりということを始めます。兄弟犬が湯たんぽから仲間に変わる時期で、それらのしぐさが、最初の社会的な反応なのです。

「社会化期」(生後3週目~12週目)

牧羊犬の場合、生後3週から12週の時期に、犬仲間、羊、人間とのふれあいを経験させて、どの存在も仲間として受け入れるようにしないと、きちんとした仕事ができる犬に育たないと言われます。

牧羊犬を育てるために、昔から行われてきた方法は、子犬の時に、将来、番をすることになるであろう羊の群れと一緒に暮らすというものです。

子犬は、生後4~5週で、羊の群れに入れられ、羊飼いから食べものをもらう時以外は、生後16週ごろまで、羊と一緒に暮らすことで、羊たちとの社会化を行います。

牧羊犬は、羊をコントロールしようとするときに、うなり声をあげたり、吠えたりしますが、それは犬にとっては、仲間に対するコミュニケーション手段です。つまり、羊を仲間と思っているからこそ、彼らに自分の意思を伝えるために、「うなり声」を使うわけです。

一般的に、牧羊犬は、生後16週までの間に、羊、胴腹の兄弟犬、成犬(母親や他の牧羊犬)、羊飼いの人間と一緒に過ごして、3つの種との社会化を経験します。

捨てられていた子犬、テリアの雑種「フラッシュ」が、フィラデルフィアのある家庭に引き取られたのは、生後4週目の頃でした。飼い主は、子育て中だった飼い猫のミルドレッドに子犬を委ねたところ、母猫は子犬を他の子猫と同じように育て始めたのです。

生後16週目の頃のフラッシュの行動は、ほとんど猫と同じで、前足をなめてそれで顔や耳を洗うという猫独特の習性まで、体得していました。

この例が示すように、子犬にとって、生後3週から12週までの社会化期に、どんな種類の動物(人間を含む)とふれあうかは、とても大切なことなのです。

人間に対する社会化は、生後3週目の始めから12週目の終わりまでの期間に行わないと、十分な効果がないと言われています。

1週間にわずか20分程度、ふれあうだけでも、適切な社会化ができるという報告もありますが、人間とふれあう時間が多いほど、子犬は人間に対して友好的になり、知らない人でもこわがらなくなるとされています。

生後4週から5週は、乳離れの時期でもあります。

その時期に、母犬がどのように子犬に接したかが、人間に対する友好度に大きな影響を与えると言われます。やさしい母犬に育てられた子犬は、友好的で臆病ではないことが多いそうです。そんな子犬は、ボール投げのゲームで「持ってこい」をやらせると、高い能力を発揮します。

盲導犬の適性検査の中には、この「持ってこい」のテストがあって、その能力が高い子犬は、盲導犬として活躍する可能性が高いと報告されています。

しかし、甘やかされるだけでは、ダメなのです。

子犬が乳を吸おうとしたときに、母犬に軽く咬まれたり、うなられたりすると、子犬は、自分より大きくて強い存在に対して服従することを学びます。それは、子犬が社会での自分の立場を認識して、自分の力と順位に添った役割を受け入れていくことにつながります。

生後10週目まで、全く罰を受けずに育った子犬は、ほとんど訓練が不可能になると言われています。

社会化期は、生後12週までで終わると考えられますが、その後、生後6ヶ月から8ヶ月になるまでに、社会的なふれあいが繰り返される必要があります。他の犬たちや人間との接触が途絶えると、社会化を体験しなかった犬と同様の行動をとるようになると報告されています。

子犬を生後12週まで、母犬や兄弟犬と過ごさせることは、将来、飼いやすい犬になる性格形成のためにとても大切なことなのです。

しかし、日本のペットショップでは、生後5~6週齢で親兄弟から引き離された子犬たちが、ショーウィンドウで展示販売されているのが現実です。十分な社会化ができていないため、将来、問題行動を起こす犬が多くなる原因のひとつと指摘されています。

(参考資料)

「犬も平気でうそをつく?」 スタンレー・コレン著 文春文庫

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