人はなぜ犬を飼うのか-(5)人間関係の潤滑油

●人間関係の潤滑剤としてのペット(犬)

1944年にジェイムズ・ボサードが「犬を飼うことの精神衛生」という論文で、「特に子どものいる家庭における、家庭生活とその一員の精神健康についての、犬が演じる重要性」について発表しました。

*犬は愛情のはけ口や話し相手の欲求を満たしてくれる

*犬は個々の必要性に適した愛情を表現する

*犬と人間の愛情は、深く長期にわたる

*犬をケアすることで、特に子どもは、責任感を学ぶ

*子犬を飼うことは子どものトイレット・トレーニングのいいお手本となる

*犬は、性差や性の認識を子どもに教育する手助けになる

*犬には八つ当たりでき、もし子どもが重要であると感じるならば、犬をしつけることで満足感を得られる

*すべての動物や人間や人間でないものが、どんな基本的な仕組みをしているか犬は明らかにする

*犬は他人への接触を手助けできる

現在では、「犬に八つ当たりできる」ことを犬を飼うことの効用とは認められないでしょうが、この論文は当時の動物福祉団体や飼い主には好評を得ました。

一般の人にとってのペットの効用、とくに犬を飼うことは、友人の輪を広げることに役立ちます。

ケンブリッジ大学の研究者は、犬を飼いはじめた人は安心感や自尊心が高まることを見出しました。犬を連れて散歩に出かけることで運動量が増えたために、健康状態が改善したり、頭痛やかぜのような軽い病気にかかることも少なくなると報告しています。

ペットは人間のさまざまな要求に応じ、無償の共感を示すことで、子どもたちに仲間意識や安らぎを提供します。情緒が不安定な子どもは動物を心の拠りどころにします。

非行を働いた青少年は、自分のペットに話しかけることや、寂しかったり退屈なときに動物の話し相手を求める頻度が高いことが分かっています。ペットの世話をすることで、子どもには相互援助の精神や責任感が育まれます。

アレイスデイル・マクドナルドの研究では、犬を家族に迎えることによって生じる「費用」と「家族への影響」を懸念する親の声が報告されています。

例えば、「犬が死んだり、いなくなった時の影響」、「隣人に迷惑をかける可能性」、「犬がこどもを傷つけたり、逆に犬が子どもに虐待されるおそれ」、「他人のものを壊す可能性」などです。そして、「子ども自身も犬を手に入れた喜びとともに、犬を飼うことのむずかしさを自覚している」というものです。

ペットは人間関係を円滑にするので、家族関係を改善します。

ペットを飼うことで家族間の親しみが増して、一緒に遊ぶ時間も増え、あまり口げんかをしなくなったという報告もあります。逆に、咬みつく犬の場合、調べてみるとその犬が飼われている家庭では、夫婦仲が悪い、飼い主が情緒不安定といったケースも多いのです。

人間は大昔からペットを飼ったり、訓練することで自分の心の健康を保つことに役立ててきました。精神科医のサールズは、次のように述べています。

「人は意識していようがいまいが、自分をとりまく人間以外のものとも結びついているという感覚を持っているものだ。その感覚は、重要な生の実感のひとつで、さまざまな感情を生む源でもある。それが自分にとっていかに重要かを顧みないでいるなら、その人の心の健康は危機的状況に陥ってしまうだろう。」

ペットから受けるメリットのためだけにペットを飼って、その期待が大きすぎるために、行儀が悪いとか、満足させてくれないからといった理由で見捨てたり、処分してしまう人がいますが、ペットとのきずなを育むようなくらしができなかったために、動物を不幸にする結果を招いたのです。

カテゴリー: 人はなぜ犬を飼うのか   パーマリンク

コメントは受け付けていません。