犬、人に飼われる (1)人と犬の出会い

陸上の食肉類は、イタチ、アライグマ、イヌ、クマなどのオオカミ族とジャコウネコ、ネコ、ハイエナなどのネコ族に分けられます。どちらも樹上で暮らしていたミアキスという同一の祖先から分かれたと考えられていて、木から降りて森林に向かったのがオオカミ族、草原に向かったのがネコ族だと言われています。

一般的には、犬の祖先はオオカミだと言われていますが、オーストラリアにいる「ディンゴ」に近いような野生の犬が先祖ではないかという考え方もあって、どちらとも断定はされていないようです。しかし、犬がオオカミの持ついろいろな遺伝的形質や習性を引き継いでいることは事実です。

犬の歯の数はオオカミと同じ42本です。妊娠期間も約9週間(60日)と同じです。

遺伝子が組み込まれている染色体の数は、犬は78本(2n)です。同じ染色体数を持っているものが、オオカミ、ディンゴ、コヨーテ、ジャッカルです。それらと犬との間で交配を行った結果、繁殖性に問題ない雑種が産まれてくることからも、遺伝的に同じ種だということが立証されています。

人間の祖先、猿人や原人にとってはオオカミ族やネコ族は怖い猛獣だったのですが、石器や棍棒などの武器を持つようになった旧人(ネアンデルタール人)や新人(クロマニヨン人)が、イヌ族を手なずけるようになったと考えられています。

イヌ科のオオカミ族は、かなり大きな集団で行動しますが、ネコ科のネコ族は小さな家族か、単独で行動します。群れで狩りをするオオカミの集団では、リーダーを頂点として、下位のものは上位のものに従うという階層社会が作られます。ボスには絶対服従するという性質があったからこそ、人間はイヌ族を飼いならすことができたと考えられています。

人間の残飯を漁る清掃屋(スカベンジャー)として人間の住まいの近くをウロウロするようになったと言われるイヌの祖先は、やがて人間に手なずけられて、生活を共にするようになります。

人間は、イヌが持つ優れた能力、鋭い嗅覚や追跡能力などに気づきました。そして、番犬や猟犬として利用するようになったというのが、従来の定説でした。

しかし、最近は、食用として利用するために飼うようになったのではないかという説が有力になっているようです。

イヌが家畜として飼われるようになったことを示す最古の痕跡と考えられているのは、3万年以上前のものとされるシリアのドゥアラ洞窟から1986年に出土した動物の骨です。ネアンデルタール人がイヌを飼っていた証拠とされています。イヌの骨だと断定されたのは、下顎の長さがオオカミよりも短く、小臼歯の間が詰まっていて、額が出っ張っているといったイヌのもつ特徴があったからです。

クロマニヨン人の時代のものとしては、2万年前のイヌの骨が、シベリアのエニセイ川流域やウクライナ地区(黒海の西北)で発掘されました。

スペインのアルペラ洞窟で見つかったイヌの絵は、約1万4000年前のものと推定されています。

約1万2000年前、旧石器時代の末のものとされるデンマークの貝塚跡から発見されたイヌの骨には、食用に供されたとわかる痕跡が見られ、ドイツのフランクフルト近辺の中石器時代の遺跡で見つかったイヌの頭骨には、打ち砕かれて、中の脳髄が取り出された形跡が残っていました。

もともとイヌが飼われはじめたのは、インドか西アジアで、人間とともに東西に分かれて移動していきました。東に移動したイヌが、朝鮮半島を経由して日本に入ってきて、さらにシベリアに北上し、陸続きの北アメリカ大陸へと伝わっていったということが、イヌの赤血球に含まれるヘモグロビンの遺伝子調査で分かりました。

これまでは、ペキニーズなどの小型の愛玩犬はアジアに住んでいた小型オオカミが、ハスキーや日本犬などのスピッツタイプは北方のオオカミがそれぞれの先祖だと言われていましたが、インドやアラビアにかけて現在も分布している小型のインドオオカミが、すべての犬の祖先である可能性が高いと考えられるようになっています。

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