衝動買いの心理-(3)ショップの販促マニュアル

●ペットショップの販促マニュアルに見る消費者心理へのアプローチ

1. お客さまは、入店時に「ちょっと見せて下さい」と言うことはあっても、「子犬を買いたい」とはおっしゃいません。この「ちょっと見せて下さい」とおっしゃるお客さまに売らなければ、子犬は売れません。ペット販売の基本は、お客さまの「見るだけ」というたてまえをいかに「欲しい」という欲求に変化させられるかです。

ペットショップに来られるお客さまの中には、すでに犬を飼っている方も多く、愛犬家として話に花が咲くことはあっても、販売にはつながりません。

2. 家族連れのご来店で、子どもさんがご両親よりも後からお店に入ってくる場合には、事前に子どもさんが、「子犬を買って欲しいと言わない」と約束させられていることが多いようです。

子犬を飼うことに家族全員が賛成していることはまれで、消極的な態度をとる人が必ずいます。その人を「その気にさせる話術」こそ、商談を成功に導くものです。家族の中で、子犬を飼うことに難色を示す最右翼は、「お母さん」でしょう。そして、お母さんが唯一、冷静です。お母さんは「育てることと、愛することが、どれだけたくさんの努力と忍耐を必要とするか」をよくわかっているからです。

3. 子犬を購入いただくためには、犬を飼うことの効用を説くことが最も効果的です。

① 子どもの情操教育としての効用(責任感を育てる)

② 家族の会話が増え、なごやかな家族関係が保てる

③ 飼い主の健康維持に役立つ(散歩)

④ どろぼうが入りにくくなる(番犬)

⑤ 繁殖(子犬を産ませる楽しみ、利殖)

⑥ ステータス・シンボル

4. 子どもさんに働きかけます。
子犬をうれしそうに抱っこしている子どもさんに、ご両親が「ちゃんと世話ができるの?」などと言い始めたら、タイミングを見はからって、子どもさんに「ボク、良かったね!」とか「名前は決めた?」と声をかけて、引くに引けない状況を作り出します。

5. お客さまと議論をしてはいけません。
お客さまが、「動物が死ぬのを見るのはいやだから」とか「どうせ子どもは世話をしないから」などの否定的な意見をおっしゃる場合もありますが、これらに対して、断定的に言い返すのではなく、「死があってこそ生命は尊い」、「子どもに責任感を養う好機である」と言った教育的見地に立ったアドバイスをします。犬の知識を並び立てて、お客さまと議論をするようなことをしてはいけません。「議論に負けて、商いに勝つ」ことを忘れてはいけません。

この販促マニュアルには、いろいろ脚色を加えていますが、ペットショップのスタッフに勧められて子犬を購入した人には、いくつか心当たりがあるのではないでしょうか。

書籍などに掲載されている「安心できるペットショップ」の条件に、「ペットの特徴、健康状態、性格などについての情報を伝えてくれて、お客さまの希望や飼育環境に添うペットかどうかの判断材料を与えてくれるスタッフがいるところ」というのがあります。

確かにそんな対応をしてくれるショップであれば理想的ですが、実際にはお客さまは早く子犬を家に連れて帰りたくてウズウズしているので、スタッフの話もほとんど上の空だそうです。

子犬を衝動買いしてしまった人が、「飼いきれなくなった」と言って、犬を手放してしまうようなことになるのは、「ペットショップ側の販売姿勢や説明不足に責任がある」とする意見がありますが、ショップ側で、「その人がちゃんと飼えるという確証がなければ売らない」などということは、現実にはありえない話です。

買った後の責任は、買うという決断をした飼い主にあります。

例えば、初めて車を運転する人は、ディーラーで車を購入しようとする前に、運転免許証を取得します。そうでなければ、車を買っても実際に運転ができないからです。

同じように、犬の飼い主免許証を取得していなければ、犬を飼えないという法律があれば、誰でも、ペットショップで犬を購入する前に、犬の飼い方を勉強して、飼い主免許証を取得しておくでしょう。

「飼いきれなくなったのは子犬を売ったペットショップのせいだ」と言うのは、無免許の人が事故を起こしたら、それを車を販売したディーラーのせいにするようなものです。

ちなみにディーラーでは、車を販売する時に、購入者に運転免許証を持っているかどうかを尋ねることはないそうですが。

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