●犬の鳴き声(吠え声)
近隣からの苦情で最も多いのが、常識的にがまんできる限界を超えるような、犬の鳴き声(吠え声)です。
集合住宅でトラブルになるケースが多いのですが、一戸建てでも、隣家と軒を接しているような都市部では、早朝に「散歩に連れて行って!!」と吠える犬に対して、複数の住民から苦情が持ち込まれるといったこともあります。
空港の深夜・早朝の離発着が制限されているのも、騒音によって安眠できず、健康を害したり、精神的に大きな苦痛を受けるいった被害から、住民を守るためです。
飼い主はたかが犬の鳴き声でと考えていても、それが常識の範囲を超えて、近隣の住民が嫌な思いをしたり、健康を害したりすれば、損害賠償の対象になります。
それだけではなく、害を加える対象を除去して、将来、被害を生じさせないようにという「差し止め請求」が認められて、「犬を飼ってはいけない」という判決も出されています。
「犬のムダ吠え」と表現されることもありますが、犬が吠える場合には、必ずなんらかの理由があります。
かつて、犬が番犬として飼われていた時代には、「吠えるのは犬の仕事だから」などと言われましたが、コンパニオン・ドッグとなった現在では、「犬は吠えるのが当然」なのではなく、「吠えない犬に育てるのが当然」なのです。
吠えるということは、犬にとっては自然なコミュニケーションの手段であるとともに、内面からの強い欲求に根ざすものでもあります。
1. 何らかのストレスを抱えていて、それを解消したいという欲求
2. 食べたいとか遊びたいといった本能的な欲求
3. 不安やストレスのあらわれ
飼い主が吠えるのをやめさせようとして、「だめよ!」と軽く叱ったりすると、犬はそれを吠えたことに対するごほうびだととらえて、さらにひどくなる(強化される)ことがあります。
犬が吠えるのを予防する方法
1. 犬が吠えることに対して、飼い主は食べ物を与えたり、遊んだり、かまったりしない。子犬が吠えたり、鳴いていても無視して、ケージから出さない。
2. 犬が吠える原因になる音や人などの刺激に慣れるようにする。あるいは、原因となる刺激を取り除くようにする。例えば、玄関のチャイムが鳴ると吠えるのであれば、それを取り替える。
吠えぐせのある犬へのしつけ
1.「静かに」と命令して、従うように訓練する。
基本的な服従訓練をクリアして、飼い主が犬をコントロールできていることが前提になる。見張っていて、犬が最初に鳴き声を出したときに、「静かに」と命令して、犬をそばに来させて座って待てをさせる。犬が静かに座った時にだけ、ごほうびの食べ物かおもちゃを与える。
2.マズル(口吻)をつかみながら、「静かに」と命令すると効果がある犬もいる。
犬が吠えるのをやめたら、すぐに手をゆるめる。ただし、犬が不安や恐れている様子で吠えていたり、普段から攻撃的な場合には、危険性があるのでやるべきではありません。
吠え出した時に、飼い主がやったと気づかれないように、小石を詰めた空き缶を落として大きな音を立てて、驚かせるといった天罰法あるいは嫌悪刺激を勧める意見もありますが、性格がシャイな犬にはかえって逆効果になります。また、音に対して動じない性格の犬には通じません。いずれにしても、吠え出した時にやらなければならないので、タイミングがむずかしいのです。
3.吠えると犬が嫌いな臭いが出る防止首輪を使用する。
問題行動を矯正する専門家の中には、飼い主が不在の時には、吠えると犬が苦手な柑橘系の匂い(シトロネラの香り)を出す首輪の使用を勧める人もいます。米国で行われた研究では70%の犬が吠えるのをやめ、20%の犬で吠える回数が減ったという報告があります。
しかし、吠え続ければ、噴出するスプレーが無くなってしまうことを学習する犬もいて、全ての犬に効果があるとは限りません。首輪本体+ボンベで18,000円以上するので、服従訓練などを試してもうまく行かない場合には、トライしてみて下さい。
4.留守番をしている時の不安感から吠える犬がいます。
分離不安と呼ばれるもので、飼い主が外出して、残された犬が不安を解消するためにとるいろいろな行動です。遺伝的な問題行動の場合もあります。
「吠える」以外にも、「家具を壊す」「トイレ以外の場所で排泄する」「前足の同じ場所をずっとなめ続ける」といった行動があります。
犬がこうした状態になるのは、飼い主との間にきちんとした信頼関係が築かれていない場合が多いのです。溺愛することと、パートナーシップを築くことは違うということを覚えておきましょう。
犬に留守番をさせる場合、子犬では4時間、成犬でも半日以内にすべきです。長時間になると、さびしさと不安から吠えたり、鳴き騒いだりします。
外出時にテレビやラジオを小さな音でつけておいたり、飲み込むおそれのないおもちゃを与えるなど、さびしさを紛らわす工夫も効果があります。