犬と子ども-(1)犬と乳幼児

第1章 犬と子ども 

●乳幼児とペットとのふれあい

子どもはペットと遊んだり、話しかけたり、なでたりして、自分からペットとふれあおうとします。

赤ちゃんも6ヶ月ぐらいになると生きた動物とぬいぐるみの区別がつくようになり、1歳になると自分の家のペットとよその家の動物との区別ができるようになります。受け身ではなく、子どもは積極的にペットとかかわりをもとうとするのです。

子どもは、温かく、ふわふわとした動物を抱く楽しさを通して、動物とのつながりを感じます。初期の段階では、子どもに何種類かの動物に実際にふれさせることが大切と考えられています。

動物学者のブルース・フォーグルは、ペットという英語にはふたつの意味があり、ひとつは犬や猫などの家で飼われている動物のこと、そしてもうひとつは「なでる、さする」ことだと述べています。つまり、人間が自由になでられることがペットの重要な役割だというのです。

一般的には、ペットは子どもの代わりをはたすものと言われていますが、実は私たちの深層心理では、ペットを母親として感じているのではないかといわれます。

赤ちゃんはおっぱいを飲むときに、母親の胸に置いた手から伝わるぬくもりや感触を通じて、母親の愛情を受け取り、安心感を得ています。人は、犬や猫をなでるときに、その感触を蘇らせ、安心感を得ることができるので、結果として、血圧や脈拍が安定するのだというものです。

「真の健康は、身体と心とたましいの全てがバランスがとれている状態」と捉え、そのバランスを整えることを目的とする「ホリスティック・ドッグ・マッサージ」には、犬の皮膚にある「圧力に敏感なタッチパッド」や感覚神経につながっている被毛に触れることで、犬のストレスをやわらげ、自然治癒力を高め、問題行動を改善するなどの効果があります。

同時に、マッサージをする飼い主もリラックスしながら、犬にドッグマッサージを行い、ゆったりした時間を過ごすことで、飼い主の心も癒されるものです。

ペットは、乳幼児が母親との分離期に愛着を寄せるようになる「ねんねタオルやくまのぬいぐるみ」のような移行対象としての役割を果たします。移行対象となったペットは、自分と外の世界のギャップの橋渡しになるもので、子どもをほっとさせ、親がいない時でも安心感を与えてくれるものです。

おむつがもうすぐとれる時期の幼児が、ちょうど子犬へのトイレ・トレーニングをしているところに出くわすと、それを自分のことに置き換えてとらえることがあります。子犬がトイレに失敗しても、飼い主である親が寛大でやさしく対応しているのを見た子どもは、自分が失敗した時にも同じように接してもらえると知って、安心するのです。

4歳~5歳の幼児では、全ての動物が生きているもの、食べたり、飲んだり、呼吸をしていることを理解しているわけではありません。しかし、7歳になるまでには、子どもは「動物は生きている」という理解ができるようになっています。「動物が生きている」と理解することが、他の生きものに対しての共感性を育む基礎になります。

「好ましい事例」

子どもが犬の足を強く引っ張ったので、犬が悲鳴を上げた。

母親  「そんなに強く足をひっぱっちゃだめよ。」

子ども 「いたいの?」

母親  「そう、ワンちゃんは痛かったのよ。でも、もうだいじょうぶ!」

すると、子どもは犬の足をやさしくなでて、犬を抱きしめた。

子どもは、無意識にペットを自分自身の延長とみなしているので、自分がされたいのと同じようにペットを扱います。この過程は、子どもが子どもの状態から離れることを学ぶための方法のひとつと考えられていて、「子どもが示す親らしい態度」と呼ばれています。まだ、3歳の子どもにもペットに対する母親的な行動が見られると報告されています。

「好ましくない事例」

子どもが犬の耳を引っ張ったので、犬が悲鳴を上げた。母親は子どもに平手打ちをくわせて、子どもの耳をひっぱりながら、それがどんなに痛いことかをわからせようとした。

母親  「そんなことをする子はうちの子ではありませんよ!」

子ども 「・・・・・・・・・」

それからは子どもは犬に近づこうとしなくなり、犬をこわがるようになった。

ペットを与えるだけでは、子どもの心を健康に育てることはできません。飼い主である親は、「犬を叩くのはよくない」といった道徳的なルールを教えるのは良いでしょうが、「そんなことをする子はうちの子ではありません」という否定的なメッセージは避けるべきでしょう。

小さな子どもには、動物は人と同じで、感情をもち、愛情を理解し、ときには慰めを必要としていることを教える姿勢を持ちましょう。

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